2025/04/06 23:08
10年前、千葉の片貝。
波を求めて、朝からサーフィンに向かった日のことだった。
漁港の奥にあるポイントで、海を見に行こうと車を止めて歩いていたとき、
ふと目に入ったのがこの一台だった。
たぶん漁師か、サーファーのクルマか。
この辺じゃどっちもあり得る。
でもそれより先に思ったのは、「黒、かっこいいな」ってことだった。
どこかレトロで、艶があって、でも派手じゃない。
ポツンと停まっていたその存在が、妙に絵になっていた。
周囲は漁港らしく、少しだけ埃っぽい空気。
その中でこの車だけが時間を止めてるように見えた。
当時、モノクロで写真を撮るのが自分の中でちょっとしたブームだった。
何か深い理由があったわけでもないけど、色がないほうが余計な情報がそぎ落とされて、
“形そのもの”を見ているような感じがしていた。
この日も自然とそうした。
たぶんカラーよりも、こっちの方が良かったと思う。
車の持ち主が戻ってきたわけでもなく、話しかけたわけでもない。
ただ「かっこいいな」と思って撮った一枚。
理由はそれだけだったけど、今でもこの写真は、自分の中で何か引っかかっている。